熊本県産い草の品種
夕凪・・・ゆうなぎ 有明5号
『沖縄太イS1』と『いそなみ』を親に持つ6月下旬より収穫できる早刈り品種。
平成17年9月より農林水産省より公表されております。
(長所)
青み深い色合いで、茎が太く、表皮が固くて丈夫。
(短所)
親品種が沖縄生まれなので、寒くなると子孫を残そうと花が付く事が多くなる
(花が付くと製品の見た目が、少し悪くなります)
また、い草が太いので、同じ仕入れ価格でも、ひのみどり種などに比べ見た目が荒くなりがちです。
また、い草が固く製織段階で切れる事が多いので、畳表へ仕上げるのが難しい為、農家さんが作るのを嫌うので、流通量が少ない
これだけを読むと短所の方が多いようですが、夕凪種は他の品種に比べ耐久性が比較的高く、当店の一押し品種とさせて頂いております。
在来種・・・ざいらいしゅ
簡単に言えば昔からある品種。
(長所)
昔からある品種なので、安定感が抜群。
昔の畳を引き上げる時、使用年数を聞くと改めてその丈夫さを実感します。
(20年位は普通に使ってますもんね)
夕凪と並んで、当店が良く使う品種です。
(短所)
色むらが出やすい為、無着色が主流の現在でも、少しの着色をしている農家がごくまれにある。
夕凪以上に生産農家さんが少なく流通量が少ない。
ひのはるか 有明6号
平成5年に熊本県の『い業研究所』で人工交配して作られた種子の中から、収量や品質の優れた物を10年以上の歳月をかけて選抜した品種。
親品種は『熊本3号』と『広系21002号』
平成18年10月に『遥か未来まで畳文化が続くように』と祈念して『ひのはるか』と命名されてます。
長所
い草の茎は『ひのみどり』と『夕凪』の中間位の太さ。い草はきめ細やかで、しなやかで粘りがある。
短所
どの品種よりも製品が安定しない。農家さんや田によって全く別物の製品になりがち。
良い物と悪い物の差がありすぎる。
ひのみどり 有明3号
平成2年に『い業研究所』にて個体選別を行い、平成10年に豊富な土地で栽培される鮮やかな淡い緑色のい草である事から『ひのみどり』と命名され、平成13年より品種登録をしています。
親品種は『下増田在来』と『せとなみ』です。
『ひのみどり種』はその等級により、『ひのさやか』『ひのさくら』『ひのさらさ』に分類され、その中でも、最高級品の『ひのさらさ』を織れる農家さんは熊本県全体の農家さんの中でも数軒しかありません。
長所
とにかく草の茎が細く、根元まで緑色で、畳表に作り上げた時に表面がきめ細かで仕上りが美しく、日焼け後の退色が美しい。
また親品種が雪国育ちなので、暖かい熊本ではストレスをあまり感じず、着花しにくい傾向にあるので、製品(畳表)の見た目が良い。
何より、生産している農家さんが多く、織りやすい為に、そこそこのレベルの製品が安定して流通している
短所
い草の細さ故か、実入りが少ない物は耐久性がなく、摩耗しやすいような気がする。
涼風
『沖縄太イ』と『ひのみどり』を掛け合わせた品種
市場には平成28年より出るようになった新品種です。
29年2月現在まで、何十件かの農家さんの涼風を見ましたが、イ草の粒の大きさは農家さんによってバラバラ。 どれが本当の性格なのか?
現段階では、正直分かりません。 ただ、農家さんの評判はすこぶる良いみたいです。(苗の枯れが少ないようですね)
平成30年には全品種の50%以上になる見通しだそうです。
どの品種においても、結局はイ草(畳表)を生産し織り上げる農家さんとその年の天候により全てが決まります。
イ草の品種の特性を見極め、上手に育てあげ、製織する農家さんの製品を仕入れる事が畳屋にとって何よりも大事な事なのであります。
尚、これらは私個人の感想であり、畳屋さんによっては、まったく違った考え方を持っているので、ご了承ください。